CNNによると、 バングラデシュにいる何百人ものロヒンギャ難民は、何人かが強制的に移住させられて無期限に収容されるのではないかとの恐れがある中、ベンガル湾にある問題の島の施設に輸送されています。バングラデシュの外務大臣によると、1642人の難民を乗せた船がチッタゴン市の近くの海岸から約40キロメートル(24マイル)離れた沈泥島”バシャンチャール”に移送されました。この記事では、台風がくると沈んでしまうというバシャンチャール島に次々と押し込められていくバングラデシュ難民の現状に対する海外報道をまとめました。
バングラデシュにおける、ロヒンギャ難民の扱い
仏教国ミャンマーで迫害を受けていた、イスラム教徒のロヒンギャ難民。なんとか隣国バングラデシュへはいるも、難民キャンプで過酷な生活を送っていました。
しかしあまりの貧困で犯罪などが横行し、5年前から「難民の無人島輸送」が計画されはじめました。そして先日ついにその計画が遂行されました。ロヒンギャ難民はバングラデシュチッタゴンまでバスで移動し、海軍によってバシャンチャールに着々と輸送されているといいます。
難民は90万人いるといわれていますが、バングラデシュ政府は、食料、住居、医療ケアを提供するという名目で10万人を輸送する計画です。なかには新たな生活を求めて能動的に船に乗った人もいれば、同意もないまま強制的に島へ送還される人もいるといます。
泥が蓄積してできた危険な島『バシャンチャール』への輸送
なかには酷い拷問を受けて、「残るか、島へ移るか」選択をせまられ島送りを選ばざるをえなかった人もいるといいます。しかし輸送先のバシャンチャールは川から海に流れ込んできた泥が、蓄積してできた島です。泥でできた島なので足元は安定せず、モンスーンやサイクロンなどがおこると沈んでしまうという危険な島。水害対策として高さ3メートルの堤防、居住区は1メートルの高さに設定されているということですが、果たして無人島での生活が本当に成り立つのか。もっと酷いことにならないのか、世界のメディアが固唾を飲んで動向を見つめています。
「沈泥島」
バシャンチャール島は、インド洋に面する50平方メートルほどの島です。ベンガル湾に囲まれたロヒンギャ難民のためのキャンプ開発。バングラデシュ政府は、ミャンマー国境近くのコックス・バザールにある広大な難民キャンプに現在住んでいる10万人に対応するため、何年もかけて島に避難民のための施設を用意してきました。
(DW NEWS)
しかし、この無人島はモンスーンの時期に部分的に水没することが多く、サイクロンの被害を受けやすいため、人権団体や難民自身が長い間、その安全性に懸念を表明してきました。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、島の状況を「貧しい」と表現し、適切な医療も受けられない可能性が高いとしています。同グループはまた、難民が移動の自由、持続可能な生計、教育を拒否される可能性があると懸念を表明しています。また、人道援助機関がそこでどのような役割を果たすことが許されるのか、何も誰もわかっていません。人道主義組織 (レフュジーズ・インターナショナル)は声明の中で、この難民輸送は「とても非人道的でであり、中止すべき」だと述べました。
否定するバングラデシュ政府
今、バングラデシュにいる何百人ものロヒンギャ難民が、物議を醸す「バシャンチャール島」の施設に輸送されています。「適切な指標と難民たちの十分な情報がなければ、これはロヒンギャの人々が国際人権法に違反して大量に拘禁されていることに他ならない」とアムネスティの上級人権擁護者であるダニエル・サリヴァンは述べました。
バングラデシュの外相は、援助機関がなぜこの動きに反対しているのか理解できないと述べ、強制的に難民を追い遣っているのではないかとの問いに「全く根拠のない」と回答しました。
外相のアラム氏は支援団体に対して「彼らは自分たちの仕事に失敗したのに、なぜこのような支援を反対するのだろうか」と付け加えたそうです。コックスバザールには90万人の難民がおり、そのうち10万人が今後島へと輸送される予定になっています。
まとめ
- ロヒンジャ難民用のキャンプ建設は5年前から計画されていた
- しかしそこは、サイクロンがくると部分的に沈んでしまう、泥でできた「危険な島」
- 医療体制なども含め、最低限の生活が送れる補償はない
しかしバングラデシュもけして裕福な国ではなく、彼らにできる「最大限のこと」ともとれる一方、「島への追い出し監禁・拘禁」ともとれるようです。
バングラデシュは、島への移動は「個人の自由で自主的なものになる」と主張しています。バングラデシュ大使館報道官シャミム氏は、「ロヒンギャの難民に対して、バサン・チャーに移住するために強制することはない」と述べて、「難民キャンプが持続可能ではないことは誰もが認めているが、バシャンチャールは当面の間、安全で自発的かつ一時的な解決策となる」と表明しました。しかし、いくつかの人権団体は、難民が強制されているのではないかという懸念を漏らしています。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、約12の家族が、自分の名前が 「行く意思がある」 と確認された人々のリストに載っているが、実際には移住を志願したわけではないというのです。
「自由意志」という名の強制でしょうか、それとも国内の土地にいるよりも、新たな場所があったほうが生活が豊かになるといったことがあるのでしょうか。世紀も変わり、事情もまた違いますが、どこかユダヤ人の迫害とアウシュビッツ強制収容所が思い起こされるのでした。
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