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【星の子 原作の感想と考察】新興宗教にハマった善良な両親と娘の物語

2020/11/06
 
星の子 (原作) 感想
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謎の女性。歴史の中の人物像を徹底的に知りたがる世界史オタク。絵画や芸術品の背景にある人間ドラマを炙り出します。

芦田愛菜ちゃんがヒロインをつとめている映画『星の子』が2020年10月に公開された。新興宗教にハマっている親の元で育った娘が中学生になりその事実に気付いた時『親への愛情』と『周りとの温度差』の狭間で揺れる彼女はどう折り合いをつけていくのか。ただ暗いだけかかというとそうでもなく、伯父や友達のさり気ない支えに温かさを感じるお話でもある。

ただ「娘を苦しみから救ってあげたい」ために始めた宗教が、精神的に娘を追い詰め親の元から離れる理由となったのではも子もない。この記事では、そこらへんの考察や感想もいれながら、映画となった物語の原作『星の子』をみていきたい

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星の子 原作のあらすじ (ネタバレあり)

星の子 (原作) 感想

主人公は、中学3年生の林ちひろ病弱だった娘を救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込み、その信仰が家族の形をゆがめていく。幼い頃に原因不明の湿疹に苦しんだちひろ、あの手この手を試してようやく効いた新興宗教に両親は傾向していく。

(※ここから先はネタバレを含みますので、気になる方はスキップしてください)

やがて父親は会社を辞めて教団の関連団体に移り、母親は怪しい聖水をひたしたタオルを頭にのせて暮らすようになる。周りは苦い顔をするが両親は団体以外の言葉を取り入れない家には祭壇が置かれて生活の質も落ちていく中で長女はついに家から逃げ出してしまうが、ちひろは普通に過ごしていた。

星の子 (原作) 感想

親の愛情を感じて素直に育ったちひろだが、将来がちらつく中学3年生になると変化が訪れる担任や友達の反応をみて、「親が信じている物を自分が受け入れられない」現実に気がついていく愛情はあれど方向性が違っていく両親との間でちひろはどんな決断をくだすのか..

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原作を読んだ感想

① 案外、人は簡単に騙される

洗脳のカラクリ

案外人は簡単に洗脳にかかるもので、一度きいてしまうと自力で抜けるのはとんでも無く難しい。「もう無理だろう」と半ば諦めているところに思わぬ救いの手が伸びると人は簡単に騙される。

ちひろの父が同僚からもらった水、最初はただで商品を気前よく配り、「申し訳ないから」と自分で購入し出すよう仕向けるのはマルチ商法や洗脳によくある手である。清められていようがいまいが結局は水であり原価はたかが知れている。その水をただで配りプラシーボ効果でハマった人に、連続して買ってもらったほうが効率がよいのだ。そうして「簡単」な入り口からはいり、周りを組織の人間でかためて徐々に高いものを買わせていく手法は今も街中でたくさん使われている。

 

② ありがちな洗脳に引っかかった善良な両親

【ネットワークビジネス洗脳と解き方】抜け出せなくなるカラクリ

親戚が「怪しい」と忠告しても、周りには団体の人間が多くいるので「あの人たちのほうが変わっているの」「あなたは特別」などと多く言われることで盲信してしまうのである。自分たちはソレを「いい物」だと信じている、騙されているなんて微塵も思っておらず「知らない人へ教えてあげたい」と心から思っている。伯父に水を真摯に勧めたのもその善意からで、怒ったのはその親切を裏切られたからでもある。

だからこそ人に勧めたり人目を気にせず堂々と緑色のジャージを着て公園で清めの儀式を行えるのだ。

 

③ 宗教にハマって、娘を失うのでは本末転倒

星の子 (原作) 感想

映画の試写会やレビューなどをみると「親の愛情は確かな物」とあるが、そうは感じなかった。たしかにちひろの病気は治っても、重要なのはそこからで娘には彼女の人生が続いていくわけだ。『落合さん』をはじめとして、明らかに搾取されて家族の生活が疲弊しているのに両親はそれでもお金を投じていく

長女はそんな両親に嫌気がさし「見限った」わけだが、ちひろより年上である姉は娘としてより『ひとりの人間』として、『新興宗教に身を投じている2人 (両親) 』から離れる決意をしたのだろう。違和感が増した (というより、宗教団体の価値観に違和感を感じたちひろも距離を起き始めている。

娘の病気を治すために始めた新興宗教が、娘を遠ざけることになったのでは結局元も子もないが、「娘が生きていれば考え方が違ってもいい」ということなのか。

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あとがき (結末について)

星の子 (原作) 感想

判断力と自制心がないと簡単に人は騙される。長女はソレが理由で家を出ているのに両親は周りから忠告などきかず団体や落合夫婦の言うことしか信じない。祭壇などに投資はするのに、自分たちは食費を削りちひろも放置されているわけではないが、充分な栄養を取れていない。やはり、愛情云々があっても、新興宗教にのめり込んでは元も子もない

ラストはちひろが出ていくのか、どんな結末が展開が広がっていくのかは読者に委ねられている。それがもし「自分が選んだ道を進みなさい」という両親の気持ちの暗示なのであれば、それが一番の愛情なのかもしれない。信じる物を押しつけず、その人自身の決断をそっと後押しする方が人間ずっと難しいものだ。

星の子 (原作) 感想

叔父さんやなべちゃんなどごく身近にさりげなく救いの手を差し出してくれてる姿が暖かく印象的だった。担任の南先生の行動は主人公目線でみると辛いものがあるが、ちひろには必要な喝だったのではないだろうか。自分で考えて決断をするってエネルギーがいるものだ。「教祖」や「師匠」のいうことに黙って従って、称賛を得ていた方が楽だったりする。失敗しても仲間が慰めてくれる。いわば宗教は夢の世界、それ以外の出来事は結局「現実の社会」であり、ちひろはそれに早くぶち当たっただけで、同じような体験を誰もがするのではないだろうか。

ちひろの場合、物語の続きを考えた時もあまり暗い展開にはならないように思う。彼女は「考える力」を持っているから、伯父や姉の声、友達の声、そして両親の声。すべてを聞くけど受け止めすぎず、彼女なりの答えを出そうと常に考えているから。さいごに、信じる、信じないの主題を通して、「考えること」こそが人間社会で生きていく上で一番大切だということを思い出すような小説に出会えたことを嬉しく思う。

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