【日本にある奇怪な場所】あまり語られない暗部、冥界とつながる境

冥界 奇怪な場所

歴史を記す権利はいつの時代も勝者にあるもの。歴史はつねに勝者の側から描かれ、そこに敗者や死者が弁解する余地はありません。

しかし日本にもいたるところに奇怪にまつわる場所があるのです。人々が畏怖してきたものは怨霊にとどまらず、人間が暮らすその傍には、得体のしれない何者かが気配を漂わせています。この記事では、日本にある冥界を接する堺であると言われている場所をご紹介します。

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京都鞍馬山、おりたった魔王尊

鞍馬山と怖い歴史

京都の北に位置する鞍馬山の麓には、『鞍馬寺』があります。794年に創建されたこのお寺には、千手観音と毘沙門天、魔王尊の三尊が祀られているのです。鞍馬山は、京都の人々から「近くて遠い」ところとされ、親しまれながらも、昼なお暗い山は畏怖されていました。

770年、唐招提寺の鑑真和上の弟子であった鑑禎が、鞍を背負った白馬に導かれてこの地にいたり、途中、鬼女に襲われたが毘沙門天に助けられたことから、毘沙門天を本尊しとして祀り歴史が始まりました。鞍馬の名は、この「鞍を背負った白馬」から命名されたとも、峻険な地形と生い茂る巨木によって昼も暗く「暗部 (くらぶ)」に由来するともいわれています。

このお寺には、さらに異色の伝説がのこされています。

鞍馬山は、650万年前に金星から魔王尊がおりたったといわれているのです。

650万年の昔、護法魔王尊がはるか金星から一切の悪魔を調状すべくこの地に降臨し、大杉に寄り憑きました。本殿に並んで建つ光明神殿に祀られている魔王尊像は、白い髭を伸ばし、羽根をはやしており、我々日本人の抱く天狗のイメージの原型ともいうべき姿をしています。魔王尊は鞍馬山の中でもひときわくらい山奥にある大杉に寄り憑き、人々はこの上杉を異形の念で祀ったのでした。

 

天狗のねぐらと呼ばれた僧正ヶ谷

僧正ヶ谷と天狗

魔王尊を祀る奥の院魔王殿は、僧正ヶ谷の木の根が剥き出しにはった木の根道を抜けたところにあります。そして一説によると、魔王尊は天狗の姿となり、鞍馬の大天狗・僧正坊などを指揮したとも伝えられています。

白い奇岩の上にたつ堂には、天狗のうちわをかたどった寺紋の羽うちわと、天狗の名前を連ねた神が貼られています。僧正ヶ谷は、山岳修行者の霊地でありました。一般の人々にとって、修験者と天狗は結びつきやすい存在でありました。そのため、この谷は「天狗のねぐら」と呼ばれるようになったのです。夜になると、駿河富士山の太郎坊、四国白峰の相模坊、伯耆大山の伯耆坊などがやってくるというのです。

若き日の源義経、つまり牛若丸が天狗と出会う逸話を題材とする謡曲『鞍馬天狗』で、牛若丸に修行をつけた天狗も僧正坊であるとされています。鞍馬山は古くから京都の人々の信仰をあつめた山でありました。

清少納言は鞍馬山に参詣し「近くて遠い」と書き残しました。文芸にもとりあげられ、謡曲では牛若丸が天狗から兵法を習う舞台として親しまれた鞍馬山その一方で、京都の北を鎮護する毘沙門天は貴族や武将に暑く信仰されていたのでした。

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広島の宮島と弥山の七不思議

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広島県にある宮島は太鼓から崇拝の対象であり、島自体が神聖視されてきました。

神の島であるため人が住むことは禁じられており、時代末期から人が住むようになりましたが、現在でも島内には墓地がなく、町民は対岸の街に町に葬られています。厳島人社が創建されたのは、593年のこと。平安時代末期に平清盛が造営した華麗な海上社殿は、それ以来人々を魅了し続けてきました。

しかし、全ての起点となっているのは、厳島神社の背後にそびえる島の主峰、標高530メートルの弥山です。

806年、弘法大師が開山したと伝えられていますが、頂上付近に散在する巨石郡は、そのはるか以前からここが神の降臨する場所とされていたことを物語っています。巨石を祭場とする磐座信仰がたもたれていたためか、弥山本堂をはじめ山内の諸堂は巨石郡に沿うように建っています。頂上近くにある干満岩の穴にたまった水は、潮の満ち干にあわせて上下するといいます。

この岩をはじめ、「弥山の七不思議」と呼ばれる伝承が語り継がれています。弥山の山頂から厳島神社の本殿をむすぶ直線をさらに延長すると、対岸の宮島外宮、またさらに極楽寺山の山頂へと連なる真北への直線となります。

弥山の七不思議 (イメージ図) (イメージ図 google map参照)

図にするとそれは明らかで、まるで何らかの意図をもっているかのように配置されているのでした。

 

琵琶湖、水辺にうまれた怪異談

琵琶湖の北側にうかぶ竹生島には、芸術、学問の女神の弁財天が祀られています。鎌倉の江ノ島、広島の宮島と並ぶ三代弁財天のひとつであり、その竹生島は弁財天を祀る弁天堂、千手観音を安置する観音堂、浅井姫を祀る都久夫須麻神社の3つの霊区にわかれています。

竹生島の誕生は、周辺の山の女神同士が背比べをした結果だと言われています。勝った浅井姫が、負けた女神に恨まれて斬り殺され、その頭が湖に転がり落ちて、竹生島になったという伝説です。

湖の南端から流れ出る瀬田川にかかる瀬田の唐橋は、奇談の舞台となっています。

必ず持ち出される伝説が、俵淘汰の百足胎児ですが、『今昔物語集』にも怨念のこもった怪奇話が残されていました。美濃国の紀遠助という男が、京からの帰りに瀬田の橋に佇む美女から、「決して開けないで。美濃の橋のたもとの女に渡してください」と小箱を預かりました。しかし妻がその箱をあけ、遠助は中にはいっていた人間の目玉や男性器を見てしまい、これは何なのかと恐怖に慄いた 実は箱の中身は女を裏切った男のもので、女は遠助にだけに見えていた霊だったのだという話でございました。

この橋は東国から京にはいる関所のような役割を果たしていて、京の人々にとって、異界との堺のような存在であったのでした。

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まとめ

この記事では、日本にある冥界と深くつながりがあるとされている場所と逸話、

  • 京都、鞍馬山におりたった魔王尊
  • 天狗のねぐらと呼ばれた僧正ヶ谷
  • 宮島と弥山の七不思議
  • 水辺にうまれた怪異談、琵琶湖

をご紹介しました。

このほかにも「黄泉の入り口」とされる出雲の地、死者までもが霊魂となって詣でた聖地熊野三山。現世と冥界とを往来した「野宰相」で知られる六堂珍皇寺など、日本には冥界・冥土の堺とされている場所が各地に、ひそかに存在しているのでした。何気なく訪れている土地であっても、何百年、何千年前にはそこで何かが行われていたのかもしれません。訪れた際は、ぜひ声なき声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

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※記事は多分に個人の見解を含んでおります。読み物としてお楽しみください。

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管理人

歴史オタクの英日翻訳者。

スペインの児童書「ベラスケスと十字の謎 」に魅了され、世界史に夢中に。読み漁った文献は国内外あわせて100書以上。史実をもとに、絵画や芸術品の背景にある人間ドラマを炙り出します。

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