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【本当は怖い絵画】ラスメニーナスに描かれた王女、マルガリータ|血族結婚がもたらした悲劇

2020/12/04
 
ラスメーニーナス マルガリータ
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謎の女性。歴史の中の人物像を徹底的に知りたがる世界史オタク。絵画や芸術品の背景にある人間ドラマを炙り出します。

『陽の沈まぬ帝国』オーストリアを凌ぐと言われながら、僅か5代で滅亡したスペインハプスブルク家そして1960年前後、バロック期スペイン絵画の黄金時代であった17世紀を代表する画家ベラスケスと、彼が描いた大作ラス・メニーナス』。この記事はこの絵の中心に描かれた愛くるしいマルガリータ王女に焦点をあて、中世ヨーロッパの歴史を紐解いていきたいとおもいます。

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス)『ラス・メニーナス ベラスケス画』

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「高貴な青い血」に取り憑かれた、スペインハプルブルク家

(画像はマリア・テレジア マリー・アントワネットの母)

陽の沈まぬ帝国と言われオーストリアを凌ぐと言われながら、僅か5代で滅亡したスペインハプスブルク家ハプルブルク家は「高貴なる青い血」を守るために近親婚を繰り返していました。異常とまで言える、血統主義を貫き、悲劇的な終末をし歴史にその存在を残した王家。そんな宮廷の宿命を一挙に背負った、ハプスブルク家王女マルガリータ彼女が誕生するまでを、時系列で追っていきます

 

断絶の原因を作った血族結婚は「苦渋の決断」だった

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス)(スペイン国王カルロス1世 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ画 1548年)

時は大航海時代、初代王カルロス1世は次々と領地を開拓し、世界最大の植民地帝国を築きました。そして、一家は2代目となる、フェリペ2世のときに黄金期を迎えます。しかし、そんな絶好調にみえる王もある悩みを抱えていました。宮廷断絶に直結する『世継ぎ問題』です。フェリペ2世3度結婚したものの、子供は次々早逝し、41歳になっても世継ぎができなかったのです。

マルガリータ王女 (フェリペ2世)(フェリペ2世の全身画)

宗教上の問題で一夫多妻制は許されず、カトリックの王妃との子供だけが世継ぎと認められる世の中でした。正当な世継ぎ』を残すため苦渋の決断に迫られた王は、実の妹の娘であるアナと結婚します。

スペインハプスブルク家 家系図 (フェリペ2世) (引用元:スペインハプスブルク家 家系図)

2人は叔父姪婚となるため、ローマ教皇は反対しましたがフェリペ2世の権力が強く、結婚にいたり4人の息子と1女をもうけました。しかし血が濃いためか子供たちは次々となくなり、「フェリぺ3世 (マルガリータの祖父)」だけが成長します。

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病弱で怠惰王フェリペ3世も、世継ぎ問題に苦しみ血族結婚

マルガリータ王女 (フェリペ3世)(フェリペ3世 肖像画)

そうした生まれたフェリペ3世は生まれつき病弱で、年老いてゆく父も、息子の将来に不安を抱いていました。「怠惰王」と呼ばれたフェリペ3世、23年に及ぶ治世を取り仕切ったのは、首席大臣のレルマ公爵あるいはウセダ公爵でしたが、彼らはこの大帝国の国政を担うにはいささか力不足であり、フェリペ2世が残した世界帝国は衰退への道を歩み始めることとなります。

そして叔父姪結婚で生まれたェリペ3世 (マルガリータの祖父) も、オーストリア・ハプルブルク家と近親結婚することになります。名門スペイン王室として、臣下や格下の諸侯との結婚などありえなかった。高貴な青い血を守るため、血族血結婚を繰り返すハプスブルク家。高貴な血を守ること、プライドは、王家断絶より重要なことだったのでしょうか

 

マルガリータ王女の父、フェリペ4世も近親婚で生まれた

マルガリータ王女 (フェリペ4世)(フェリペ4世の肖像画 ベラスケス画)

近親婚が淡々と繰り返されていくハプスブルク家マルガリータの父フェリペ4世は「無能王」と称され、家臣に政治を丸投げして、女遊びや娯楽に夢中になっていたといいます。ただし宮廷画家にベラスケスを登用するほど、唯一芸術には見る目があったと言われています。(参考記事:【ラス・メニーナス】ベラスケスの胸に描かれた、赤い十字の謎)

度重なる近親婚のためか、8人の子供は亡くなり、また妻をも出産が原因で失くしてしまったフェリペ4世。彼も世継ぎ問題には苦労をし、結果として妹マリア・アンナの娘、マリアナ・デ・アウストリアと、近親婚(叔父姪結婚をしますこの2人の間に生まれたのが、あの愛くるしい「マルガリータ王女です。

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス)(薔薇色のドレスの王女 ベラスケス画)

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マルガリータ王女が背負った、宮廷人の宿命

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス) (参考:怖い絵画【青いドレスの王女マルガリータが背負った 宮廷人の宿命】)

マルガリータ王の大のお気に入りで、ベラスケスら宮廷画家たちに彼女の多くの肖像画を書かせました。弟カルロス2世とは違い、近親婚の大きな影響は見られなかった、と言われていますが、スペイン大学の研究によるとマルガリータの近交係数近親交配の度合いを表す数値は、親子間、兄弟間ででる数値の4倍だったことがわかっています。

スペインハプスブルク家 家系図 (カルロス2世) (引用元:スペインハプスブルク家 家系図)

男児が生まれず、一時は「スペイン女王に」と名前があがったマルガリータ。しかし世継ぎ(弟のカルロス) が生まれましたので、マルガリータはウィーンへと嫁ぐことになります。

 

王女マルガリータは16歳でウイーンへ

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家) (婚礼を前に、父王の喪に服す王女(15歳、デル・マソ画、プラド美術館収蔵)

これはマルガリータが15歳のときにデル・マソが描いた作品婚礼を前に、父王の喪に服す王女』です。愛くるしい少女だっマルガリータも美しい女性へ変貌を遂げています。この絵が描かれたのは父フェリペ4世が亡くなった直後でしょうか、悲しさが表情から伝わってきますね。

 

またもや繰り返される近親婚

スペインハプスブルク家 家系図 (スペインハプスブルク家 晩年の家系図)

マルガリータが嫁いだのは、実母の弟であり11歳年上のレオポルト1世でした。マルガリータは彼をおじさまと呼んで慕い宮廷生活のなかでは比較的幸福で平和な結婚だったといいます。そしてマルガリータは、16歳という若さで男児を出産することに成功します。

マルガリータ・テレサと娘

そして6年間で6人の子供をもうけますが、最期の子を出産する際、子供と共に亡くなってしまいました。若くして度重なる妊娠に身体はすっかり弱ってしまったようです。ちなみにマルガリータの子供は長女のマリアのみが成人し、他は幼いうちに亡くなっています。

 

(裏話) スペインハプスブルク家の王朝の最後

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス)(フェリペ・プロスペロ王子、ベラスケス画、1659年)

マルガリータ王女には、愛くるしい弟がおりました。こちらはベラスケス最期の肖像画といわれる絵、身体が弱く、この世の人とは思えないほど純粋無垢で美しい、フェリペ・プロスペロ皇子です。生まれながらに病弱であったことが、この絵画にも反映されています。もしかしたら、立っているのすら辛いほどだったのかもしれません。弟カルロス2世誕生の数日前にわずか4歳でこの世を去りました(参考記事:【ベラスケス最後の肖像画】儚く美しいマルガリータの弟、フェリペ王子)

 

スペインハプスブルク家 最後の皇帝

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス)(カルロス2世 Carlos II)

こちらはマルガリータと、フェリペ王子の弟として生まれたカルロス2世です。39歳まで生き抜いたものの、度重なる近親婚の果てを表したように、病弱でいくつか病気を抱えていました

彼には子供ができず、世継ぎがいなかったため、「日の沈まぬ帝国」と呼ばれたスペインハプスブルク家はわずか5代で断絶にいたりました。カルロス2世起きた近親婚の弊害については、こちらの記事【呪いの子と呼ばれたカルロス2世】スペインハプスブルク家の近親交配と没落にまとめております。

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あとがきにかえて

マルガリータ王女 (スペインハプスブルク家と、ラスメニーナス)『ピンクのドレスの王女』(10歳、プラド美術館収蔵)

宮廷人という宿命を背負って、命を全うしマルガリータ王女領地と権力を守るために、幾度も重ねた血族結婚の果てに生まれた、美しく、愛くるしい子供たち4歳にして皇帝の座についカルロス2世は、幼少期には衣服を身につけた動物のようで、教育を施すことも困難であったと言われています。

1580年から1640年まで、海外植民地を含めて「日の沈まぬ帝国」と呼ばれたスペインハプスブルク家絵画の面白さは、400年近く前に懸命に生きただろう、人々の生き様が生々しくリアルに、そして悍ましいほど美しく切り取られキャンバスの中に静かに眠っていること。そんな名画『ラス・メニーナス』は、500年近くたつ今も、スペイン・マドリードにて人々を魅了し続けているのでした。

ハプスブルク家シリーズの続編はこちら

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