【ハプスブルク家の呪い】なぜ一族は近親交配を止められなかったのか

呪われた王室

王というものは、得てして「不幸」であったといわれています。中でも多くの因果を背負ったのが、ハプスブルク家と呼ばれる一族に生まれた国王でありました。「近親交配」が病弱な子を生み出すという認識は、当時でも一定レベルで知られていたといわれています。

それにもかかわらず、同家が近親婚をやめることはありませんでした。この記事では、「ハプスブルク家の呪い」と称される同家の近親交配の歴史、そしてなぜ一族は近親婚を繰り返したのか、悲劇の歴史を追っていきます。

この記事のポイント
  • 婚姻外交で領土を拡大したハプスブルク家は他家の侵入を恐れるようになった
  • 財産や領土への執着から他家との婚姻を禁ずる暗黙のルールが出来上がっていった
  • 結果として、同族内の結婚が増え、近親婚が繰り返されていくことになった
スポンサーリンク

近親婚の起源

近親婚が繰り返されるようになったのは、スペインの全盛期を築いたといわれる「カール5世」の時代でした。カール5世はこの家系図にみえるように、「ハプスブルク家の父フィリップ」と「スペイン王女フアナ」の息子です。

スペイン王家には後継がおらず、半分血を引くカール5世が後を継ぐことになりました。つまり、ハプスブルク家は半ば、合法的にスペインを乗っ取ることに成功したのです。

止まらぬ独占欲

ハプスブルク家が広大な領地を持つことになった裏には、極端なまでの「婚姻外交」がありました。言い方は悪いですが、ハプスブルク家は、「良家の王女をたぶらかして、国ごと手に入れる」といった、半ば結婚詐欺師のようなやり方で世界中へと領土を拡大していったのです。

近親婚が繰り返された理由

「婚姻外交」によって領土を拡大してきたハプスブルク家

今度は他家に同じことをされるのではないかと恐れるようになります。そうして、領土を奪われないよう、他家との婚姻を禁ずる暗黙のルールが出来上がりました。所有する領土や財産への独占欲が、歪んだ近親婚を生み出すことになったのです。

スポンサーリンク

近親婚の弊害

ハプスブルク帝国はカール5世の時代に、全盛を誇りました。カール5世の死後、領土は二つに分かれ、スペイン領土は息子のフェリペ2世へ。オーストリア領土は、弟のフェルディナント2世へと引き継がれました。悲劇が起こったのは、前者の「スペインハプスブルク家」の方ですね。

スペイン家の詳しい近親婚の経緯はこちらに記しておりますが、何代にもわたる近親婚の結果として疾患や障害、奇形を持った子が生まれるようになったのです。

異常な死亡率

スペインハプスブルク家の王族は「先端肥大症」という病気に苦しめられることになりました。成長期において、成長ホルモンが過剰に分泌されることにより、「下顎」がせり出し、唇が暑くなり顎が突き出ます。手足が短くなり、体の筋肉が収縮、とく顎の筋肉が弱くなり、口を閉じることが難しくなるような状態の子供が目立ちました。

死亡率はとてつもなく高く、同家に生まれたの子は多くが10歳以上、生きることができず夭逝。16世紀から17世紀までのハプスブルク家に生まれた34人の子供のうち、10人は1歳までに、17人が10歳までに亡くなってしまいました。

ハプスブルクの呪い

人々は病に苦しむ王族をみて、「王家は呪われている」と噂しました。しかし、疾患や障害、奇形をもった子が生まれたのは、何代にもわたって続けられた近親結婚のためです。

王家では叔父と姪、いとこ同士など血縁者の間で結婚が繰り返されていたため、遺伝性疾患が生じたのだといわれています。事実、スペインハプスブルク家の約8割が3等身以内の結婚であり、近親交配の密着率 (近親交配係数) は異常な数字を示していたのです。

フェリペ2世以降、フェリペ3世、フェリペ4世、カルロス2世と4代のスペイン王が続きますが、スペインハプスブルク家はカルロス2世の死去によって断絶することなったのでした。

スポンサーリンク

まとめ

近親交配が良くない結果をもたらす認識は、当時もあったといわれていますが、財産や領土への執着から、他家との婚姻を禁ずる暗黙のルールが出来上がっていったハプスブルク家。結果として同族内での婚姻が増え、近親婚が繰り返されていくことになったのでした。

ちなみに近親婚が繰り返されたのはオーストリアハプスブルク家も同ですが、どちらかというと健康な子沢山の家系で、マリー・アントワネットの母アリア・テレジアは男児5人、女児11人という大家族を築きました。これは、スペインほど近親交配の密着率 (近親交配係数)は高くなかったためだと言われています。

一説に「高貴な青い血」を汚されないため、という見解もありますが (それもあるのでしょうが)、結局一族が取り憑かれていたのは、手にした「領土」であり「お金」であり、欲望がいきすぎたために人知を超えた世界へ足を踏み入れてしまったのかもしれません。

この記事を読んだ人へおすすめの記事

スポンサー広告
管理人

歴史オタクの英日翻訳者。

スペインの児童書「ベラスケスと十字の謎 」に魅了され、世界史に夢中に。読み漁った文献は国内外あわせて100書以上。史実をもとに、絵画や芸術品の背景にある人間ドラマを炙り出します。

Naaya Alexisをフォローする
呪われた王室
スポンサーリンク
Naaya Alexisをフォローする
不気味なる歴史の舞台裏
タイトルとURLをコピーしました