一躍世界の注目をさらった『エミリーパリへ行く』。しかし実際にパリの人々からは、「こんなにひどくない」と反発する意見も出てきました。この記事では、アメリカのニューヨークタイムズ誌への掲載を元に、エミリーパリへ行くへの海外の反応を見ていきたいと思います。
- ステレオタイプが異常に誇張されている
- タバコや広告撮影シーンなど、現代のフランスにそぐわない部分も多々
- しかし、表情やランチの仕方や衛生観念など納得できることもしばしば
フランス人の嘲笑をかって
アメリカの大衆文化を嫌うフランスの雑誌Les Inrockuptiblesは、「この番組を見て、パリの人々は笑っている」とコメントしました。22歳から81歳までのパリジャンが「エミリーパリへ行く」のプロモーションビデオを見せた時も、得られたのは微妙な反応だったといいます。
もう少しはっきりというならば、大部分の反応は 「嘲笑」でありました。おかしい、ばかげているというよりは、滑稽で面白いというニュアンスです。
実際のパリではありえない?
滑稽だと呼ばれる背景には、エミリーがハイヒールを履き、パリの通りや20代そこそこの彼女には合わない派手な服装を身につけて登場することなどがあげられます。
会社の上司であるシルヴィーが、エミリーを公然と侮辱し軽蔑しているのもまたフランスの人々から「嘲笑」をかうひとつの理由でしょう。そしてエミリーがフランス語を話さず、携帯電話の翻訳アプリに依存していたこともまた「嘲笑」をかいました。翻訳アプリは多少のサポートにはなりますが、実際のところ実生活のコミュニケーションでは殆ど使われないからです。
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初対面で頬にキス?
「ステレオタイプが妙に誇張されてコミカルになり、滑稽な小さな物語を集めたかのようだ」 というのはフランスの小さな書籍出版社 「エクシルズ」 のオーナーで所長のフィリップ・ツロー=ダンギン (65) です。
退任する取締役がエミリーの頬に挨拶でキスをする場面もありますが、「最初の会議でそれはない」と多くのフランス人が主張しました。そして数年前から、フランスのオフィス内では喫煙も出来なくなっています。シルヴィーのように延々とタバコをふかしているのはなかなかに不自然といえるでしょう。
#Me Too
もうひとつ、普通ならば起こり得ないのは、アントワーヌ率いる香水の広告撮影でしょう。アレクサンドル3世橋を香水だけ纏って練り歩くのは金髪のセルビア人モデル。エミリーはここで「#Me Too」運動を持ち出し、この広告は女性蔑視であることを指摘しました。しかしシルヴィーが味方するアントワーヌ (フランスの調香師)はそれを「むしろセクシーだ」と返しました。
「あれは20年、または30年前に宣伝で使用したヌードのパロディーだ」というのは、29歳の映像作家、レオ・ビジャウイです。「セーヌ川の橋の上で、何の衣服も纏わない女性を広告として撮影するなんて想像もできない」とビジャウイ氏は言いました。
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「女中部屋」の嘘
パリの人々が指摘したことの中には、エミリーが120ワットの電化製品を使って近所の電気を止めたことも含まれていました。アパートの電気が落ちることはあっても、近所全体の電気を止めることはな行くでしょう。
彼女のアパートは、「女中部屋」と紹介されていました。しかしあれは、誰がみても、屋根裏部屋の中でも特に狭いシャンブレ・ド・ボンヌ (メイドの部屋) ではなく、下の階と同じような普通の部屋だと思ったはずです。
あながち間違いではないこんな所
とはいっても、自身、20代前半の時に、外国でドイツ人社長が経営する会社で働いていた時、同じようなことを感じたこともありました。同僚はカナダ人男性とフランス人女性 (50代)。
- 笑ってると「なぜ理由がないのに笑うのか」
- ランチは別々、仕事は完全な縦割り (チームでなく個人戦)
- 相談することがあっても「それあなたの仕事でしょ?」
別に特に意地悪をしているわけではないのだが、あたりはキツかったのです。
衛生事情
また、度々出てくる、道端に落ちている「うんち」のくだりはフランスの歴史の興味深い部分でもあります。(参考記事:【ヴェルサイユ宮殿】全く憧れない18世紀のヤバすぎる衛生事情)
確かに何もかも大袈裟だし、ご都合主義甚だしいけれど、案外アメリカから見たパリのイメージが具現化されているところもあるのでしょう。それに、それでもこのドラマをみるとパリがより魅力的にみえるのだから不思議なものです。
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まとめ
ネットフリックスオリジナルドラマ、「エミリーパリへ行く」に対する外国人の反応。
- ステレオタイプが異常に誇張されている
- タバコや広告撮影シーンなど、現代のフランスにそぐわない部分も多々
- あるけれど、表情やランチの仕方や衛生観念など納得できることもしばしば
ただ全体的にみて、やはり主人公「エミリー」に対するご都合主義であるので、総じて自国の文化を嘲笑されているように感じても無理はないのかもしれません。2021年12月には、ネットフリックスで「エミリーパリへ行く」の、シーズン2がリリースされました。また新たに、”フランスの誇張”が見られるかもしれません。
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