ハプスブルク顎に秘められた恐るべき歴史【みてはいけない禁断の夢】

呪われた王室

特徴的なハプスブルグあごに見られるしゃくれ、これは王家の近親交配による可能性が高いとして長年議論が重ねられてきました。そして新しい研究では、近親婚と突出した顎の相関関係が科学的に明らかになったのです。この記事では、ハプスブルク家に伝わる「あごと下唇」に秘された秘密を、研究結果とともに紐解いていきます。

この記事のポイント
  • ハプスブルクの君主に受け継がれた鋭く突き出た顎、ふくらんだ下唇
  • 研究の結果「高い近親係数」を持つ者ほど異形特徴が強かった
  • 実際研究されたハプスブルク家の下顎前突症の重症度をみると、22%が近親交配の影響であった
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ハプスブルク顎

多くの王室がそうであったように、ハプスブルグ家は近親者に権力を集中させるために戦略的結婚を重ねてきました。権威者が住む宮殿はきらびやかで壮麗でしたが、王族自身にはときに目を覆いたくなるような現実が隠されていたのです。

ハプスブルクの君主は代々鋭く突き出た顎、ふくらんだ下唇、長い鼻をもっていました。しかしこの特徴は世代を超えるごとに顕著になり、口を閉じることができないほどの影響を及ぼしていくことになります。また研究の結果、この特徴的な「ハプスブルグ顎」は近親交配によるものである可能性が高いことがわかっています。

一族内結婚

サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学の研究者は、スペイン・ハプスブルク家にうまれた15人に焦点をあてました。ことは1496年にハプスブルク家のフィリップ美公がカスティーリャ王女フアナと結婚したところからは始まります。この二人の子供である「カール5世」の代から、ハプスブルク家はオーストリア系、スペイン系へと別れます。

(ハプスブルク家の家系図)

血族結婚が色濃くみられたのは「スペインハプスブルク家」です。

同一族は2世紀もの間、原因不明の不調や不妊症に悩まされました。それは代が続くほど顕著になり、最後の国王カルロス2世にはついに子供を作れる状態ではなく、後継者不在でスペイン・ハプスブルク家は断絶へと追い込まれます。

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研究結果が示すもの

オーストリア、ドイツ、そして神聖ローマ帝国を統治するハプスブルク家が中央ヨーロッパで権力を握るようになり、ハプスブルク家の影響力は西へと広がっていきます。多くの王族がそうであったように、ハプスブルク家もまた権力を一族に集中させるために、親戚同士の婚姻を勧めていました。

研究者らは、20世代以上にわたる広範な家系図を用いて、ハプスブルグ家の「平均近親交配係数」を算出しています。そしてわかったのは、ある人物に対する遺伝子のうちおよそ9%が同じ祖先から受け継いだものだということでした。

これはどういうことか、つまり「突出下顎」や「下唇」といった劣勢遺伝子が凝縮されて子孫に受け継がれていた結果、世代を重ねるごとに、ハプスブルク家の一族には突出した顎、下唇、長い鼻目立つようになっていったと考えられているのです。

高い近親係数ほど

一族がどの程度、同系交配したかを見える化するのに加えて、者らは、口腔外科医および顎外科医に、それぞれのハプスブルク家が有する下顎前突症(1)と上顎の欠乏(2)になど、顔に現れた特異数を調べました。これは、高い数字がでるほど、異形特徴が強いことを表しています。

発見したのはヴィラスのチームで、MPスコアが高い「ハプスブルグの顎」が近交係数が高い可能性が高いことがわかりました。 実際研究されたハプスブルク家の下顎前突症の重症度をみると、22%が近親交配の影響であったのです。(※1 MP、または突出した顎 2沈み込んだ中顔面)

カール5世 (カルロス1世)

フェリペ4世、カルロス1世、カルロス2世はそれぞれ、MP7つの特徴のうち約5つを持ち合わせており、これは研究対象となった他のどの親族よりも多いものでした。

カルロス1 (神聖ローマ皇帝カール5) 、「長い顔と片寄った口が特徴であり、その様子は肖像画にも反映されています。彼は、廷臣がいないときは常に口が開いていた、といわれています。

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近親婚の影響をうけた兄弟

carlos2sei

ただスペイン・ハプスブルク家1代目だった「カルロス1世」の近親係数は比較的低いものでした。婚姻の遺伝的影響が現れていくのは同家に生まれてきた、子孫たちです。最も近親婚の影響を受けたのは、スペイン・ハプスブルク家5代目の君主となったカルロス2だといわれています。彼は舌が大きすぎること、てんかんや癇癪、その他の病気を理由に「エル・ヘチザド (呪われた子)」あるいは「魔法にかけられた子」と呼ばれていました。

彼と彼の姉マルガリータの近交係数(近親交配の度合いを表す数値)は、親子間、兄弟間ででる数値の4倍だったこともわかっています。しかし実際カルロスの父母は叔父姪婚だったこと、そして父母も近い血の上に生まれたことを考えると納得の数字でもあります。

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まとめ

カルロス2世が亡くなる4年前のこと、英国公使アレクサンダー・スタンホープは、シュルーズベリー公爵への手紙の中でスペイン国王の様相をこう記していました

彼は貪欲な胃を持っていて、下あごがとても突き出ている。

2列の歯を合わせることができないので、食べたものを全部飲み込んでしまう

また彼に関しては、当時の医師による解剖初見など様々な資料が残されています。当時スペイン宮廷の乳児死亡率は、他の王室に比べてとても高いものでした。

権力を外に逃さないため、高貴な青い血を汚さないためにかさねられた近親婚の結果が悲劇を招いた中世のスペイン王家。どんなに優れたものであっても、そこに固執してしまっては、良からぬ結果をもたらすことになるのかもしれません。

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