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【ハプスブルクのしゃくれ】は重ねられた近親婚の結果だった!?

2020/07/26
 
ハプスブルクの顎
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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

特徴的なハプスブルグあごに見られるしゃくれ、これは王家の近親交配による可能性が高いとして長年議論が重ねられてきました。そして新しい研究では近親婚と突出した顎の相関関係が科学的に明らかになったのです。この記事では、ハプスブルク家に伝わるあごと下唇に秘された秘密を、研究結果とともに紐解いていきます。

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ハプスブルク家にみられるしゃくれ

ハプスブルク顎

多くの王室がそうであったように、ハプスブルグ家は近親者に権力を集中させるために戦略的結婚を重ねてきました。権威者が住む宮殿はきらびやかで壮麗でしたが、王族自身にはときに目を覆いたくなるような現実が隠されていたのです。

マクシミリアン1世とその家族

ハプスブルクの君主は代々鋭く突き出た顎、ふくらんだ下唇、長い鼻をもっていましたしかしこの特徴は世代を超えるごとに顕著になり、口を閉じることができないほどの影響を及ぼしていくことになります。雑誌『Annals of Human Biology』に掲載された新たな分析によると、この特徴的な「ハプスブルグ顎」は近親交配によるものである可能性が高いといいます。

 

ハプスブルク家特有の、一族内結婚

研究

サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学の伝学者ヴィラス・ローマン氏 (Roman Vilas) が率いる研究者は、スペイン・ハプスブルク家にうまれた15人に焦点をあてました。

1496年にハプスブルク家のフィリップ美公がカスティーリャ王女フアナと結婚。ふたりの子供カール5世の代からハプスブルク家はオーストリア系、スペイン系へと別れます血族結婚が色濃くみられたのはスペインハプスブルク家で、一族は2世紀もの間、原因不明の不調や不妊症に悩まされました

スペインハプスブルク家 家系図(カール1世から5代にわたりスペイン・ハプスブルク家が統治)

それは代が続くほど顕著になり、最後の国王カルロス2世にはついに子供を作れる状態ではなく、後継者不在でスペイン・ハプスブルク家は断絶へと追い込まれます。

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大学の研究結果でみえてきたこと

『突出した顎や受け口』といった劣等遺伝子が受け継がれて

マクシミリアン1世

オーストリア、ドイツ、そして神聖ローマ帝国を統治するハプスブルク家が中央ヨーロッパで権力を握るようになり、ハプスブルク家の影響力は西へと広がっていきます。多くの王室と同様にハプスブルク家は権力を一族に集中させるために権力を統合し、多くの場合親戚同士の婚姻を斡旋していました。ヴィラスと彼の同僚は20世代以上にわたる広範な家系図を用いて、研究者らはハプスブルグ家の平均近親交配係数を算出しました

 

ナショナル・ジオグラフィックのエド・ヨン氏によると、これはつまり、ある王室の人物に対応する遺伝子(母方一人と父方一人)のうちおよそ9%が同じ祖先から受け継いだものだといいます。つまり「突出下顎」や「下唇」といった劣勢遺伝子が凝縮されて子孫に受け継がれていた結果、世代を重ねるごとに、ハプスブルク家の一族には突出した顎、下唇、長い鼻目立つようになっていったと考えられているのです。

 

突出した持ち主ほど、近親係数がたかい

フェリペ2世の肖像画 (スペインハプスブルク)

各貴族がどの程度同系交配したかを見える化するのに加えて、者らは口腔外科医および顎外科医に、それぞれのハプスブルク家が有する下顎前突症(※1)と上顎の欠乏(※2)になど、顔に現れた特異数を調べるよう依頼しました。高い数字がでるほど、異形特徴が強いことを表しています。

ヴィラスのチームは、MPスコアが高い「ハプスブルグの顎」が近交係数が高い可能性が高いことを発見しました。 実際研究されたハプスブルク家の下顎前突症の重症度をみると、22%が近親交配の影響であったのです。(※1 MP、または突出した顎 ※2 沈み込んだ中顔面)

カール5世 (カルロス1世)

フェリペ4世、カルロス1世、カルロス2世はそれぞれ、MPの7つの特徴のうち約5つを持ち合わせており、これは研究対象となった他のどの親族よりも多いものでした。カルロス1世 (神聖ローマ皇帝カール5世)、「長い顔と片寄った口(廷臣がいないときは口が開いいたとされる)が特徴であり、その様子は肖像画にも反映されています。

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もっとも近親婚の影響をうけた兄弟

最後の国王カルロス2世と、王女マルガリータ

carlos2sei

ただスペイン・ハプスブルク家1代目だったカルロス1世の近親係数は比較的低いもので、婚姻の遺伝的影響が増していくのは後世、彼の子孫たちです。

最も近親婚の影響を受けたのは、スペイン・ハプスブルク家5代目の君主となったカルロス2世。彼は舌が大きすぎること、てんかんや癇癪、その他の病気を理由に「エル・ヘチザド (呪われた子)」あるいは「魔法にかけられた子」と呼ばれていました。彼と彼の姉マルガリータの近交係数(近親交配の度合いを表す数値)は、親子間、兄弟間ででる数値の4倍だったこともわかっています。しかし実際カルロスの父母は叔父姪婚だったこと、そして父母も近い血の上に生まれたことを考えると納得の数字でもあります。

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当時のカルロス2世についての記録

カルロス2世 スペイン王

カルロス2世が亡くなる4年前のこと、英国公使アレクサンダー・スタンホープは、シュルーズベリー公爵への手紙の中でスペイン国王の様相をこう記していました

letter彼は貪欲な胃を持っていて、下あごがとても突き出ていて、2列の歯を合わせることができないので、食べたものを全部飲み込んでしまう

また彼に関しては、当時の医師による解剖初見など様々な資料が残されています。当時スペイン宮廷の乳児死亡率は、他の王室に比べてとても高いものでした。権力を外に逃さないため、高貴な青い血を汚さないためにかさねられた近親婚の結果が悲劇を招いた中世のスペイン王家。どんなに優れたものであっても、そこに固執してしまっては、良からぬ結果をもたらすことになるのかもしれません。

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参考文献

  • https://www.smithsonianmag.com/smart-news/distinctive-habsburg-jaw-was-likely-result-royal-familys-inbreeding-180973688/
  • https://www.britannica.com/topic/House-of-Habsburg/The-Habsburg-succession-in-the-18th-century

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