【血友病とヨーロッパ王室の現在】王室病はエリザベス2世に引き継がれていたのか

イギリス王室

イギリスから世界中の王室へと受け継がれた恐怖の王室病「血友病」。この遺伝子は元々英国王室のヴィクトリア女王が保有していたことは広く知られていますが、現代の王室にはどこまで引き継がれているのでしょうか。この記事では、エリザベス2世までの家系図を用いて病の行方を負っていきたいとおもいます。

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家系図でみる王室病

ヨーロッパ王室が、「王室病」に苦しんでいたことはいまや有名ですが、チャールズ皇太子をはじめとする現在の王室人は血友病を患っていないのか、という疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。結局、エリザベス2世も夫のフィリップ殿下も、血友病の保因者であるヴィクトリア女王の直系の子孫でありました。

これはエリザベス2世、フィリップ殿下ともに同じで、彼らは3代目の従兄弟同士でありました。家系図にするとこうなります。

血友病Bとも呼ばれる第9因子欠乏症の保因者として知られるヴィクトリア女王は、フィリップ殿下の高祖母でもありました。

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フィリップ殿下の血縁

ギリシャで王子として生まれたフィリップ殿下。母アリスは、ヴィクトリア女王の曾孫にあたる存在でした。フィリップ殿下はヴィクトリア女王の第3子アリス王女の血を引いており、アリス王女は母と同じく第IX因子欠乏症 (血友病B) の保因者でありました。

2本あるX染色体のうちの1本に“変異”をもっている女の人を、遺伝学の言葉で「保因者」といいます。実際、ヴィクトリア女王には9人の子供がおり、うち娘2人 (アリスとベアトリス) が保因者、 息子1人 (レオポルド) が血友病でありました。

運命の分かれ目

王女アリスはヘッセン大公ルイ4世と結婚しました。アリスはヘッセン家とこのドイツ系に血友病を持ち込んだことになります。ふたりには7人の子供が生まれました。うちひとりは血友病 (フレデリック)で、アリックスとフィリップ殿下の祖母ヴィクトリアは「保因者」でした。

アリックスはロシア皇帝ニコライ2世と結婚し、生まれた息子のアレクセイには血友病の症状が現れました。ニコライ2世は血友病にかかった息子の苦しみに気を取られ、怪僧ラスプーチンの台頭を許し結果として君主制を掌握できなくりました。

しかし、フィリップ殿下に血友病の兆候は見られませんでいた。つまり、フィリップ殿下の祖母ヴィクトリア、母アリスは血友病の遺伝子を「保有」していたものの、孫のフィリップにはそれが受け継がれなかったことになります。

「王室病」は受け継がれず?

ちなみに、エリザベス女王側は血友病の遺伝子を保有していませんでした。エリザベス2世は、ヴィクトリア女王の息子、エドワード7世の直系の子孫ですが、彼は血友病の遺伝子を保有していなかったからです。

血友病は男児がうまれたときに発症するのが一般的でした。現在では、この疾患は伴性X染色体上に位置する遺伝性疾患であることがわかっています。女性に出にくいというのは、この形質は劣性であり、 X染色体を2本もつ女性がこの疾患を発症するには母親と父親の両方から突然変異を受け継がなければならないからです。

それに対してX染色体を1本しかもたない男児は、疾患が遺伝する可能性が高くなります。エドワード7世には症状が現れませんでしたので、エドワード7世はこの遺伝子を保有していなかったことになります。

エリザベス2世には血友病の遺伝子が受け継がれていなかったため、チャールズ3世も、そのまた息子のウィリアム王子とハリー王子も血友病の遺伝子を保有していなかったことになります。そもそも持っていなかったし、血友病を受け継ぐ危険性もありませんでした。

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まとめ

フィリップ殿下も、エリザベス女王もヴィクトリア女王の血を継いでいますが、両方とも遺伝子が受け継がれることはありませんでした。

ただ、血友病の患者がいないことは喜ばしいことですが、仮に血友病の患者がいたとしても、今日のような優れた治療法があれば、王室の公務にはほとんど支障がなかっただろうといわれています。

ヴィクトリア女王の息子レオポルドは、女王の9人の子供のうち唯一血友病を患っており、娘のアリスに「保有遺伝子」を引き継いでいました。ヴィクトリア子孫はロシア、スペイン、ドイツの王族と結婚し、血友病の子供をもうけることになります。

ここから血友病は 「Royal Disease (王室病) 」 と呼ばれるようになりました。イギリス王室は現在も続いており、ロシアの君主制はそれによりとっくに淘汰されているのですから、歴史とは本当に予想のつかない「不思議な結果」なのでありました。

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管理人

歴史オタクの英日翻訳者。

スペインの児童書「ベラスケスと十字の謎 」に魅了され、世界史に夢中に。読み漁った文献は国内外あわせて100書以上。史実をもとに、絵画や芸術品の背景にある人間ドラマを炙り出します。

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