【王室病の起源はどこにあったのか】はじまりはヴィクトリア女王の父母!?

イギリス王室

19世紀から20世紀にかけてヨーロッパの王族の間で受け継がれてきたた血友病。ヴィクトリア女王の子供たちからヨーロッパの王室へと広がったことは知られていますが、起源はいったいどこにあったのでしょうか。この記事では、王室病の起源はどこにあったのかを探っていきたいとおもいます。

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王室病

ある意味「王室病」のはじまりであるといわれているヴィクトリア女王。彼女は、5人の娘のうちの2人、アリス王女とベアトリス王女を通じて、スペイン、ドイツ、ロシアの王室を含む大陸各地の王室にこの突然変異を伝えたといわれています。このことから血友病は、Royal deaseases (王室病) と呼ばれました。

ヴィクトリアの末子であるレオポルド王子には血友病の症状が現れましたが、上の3人の王子はいずれも発病していませんでした。ロマノフ王家の遺骨を使った検査では、ヴィクトリア女王に伝えられた血友病の具体的な型は、おそらく比較的まれな血友病Bであることがわかっています。ヨーロッパの王室内に血友病Bが存在することはよく知られており、この状態はかつて 「王室の病気」 として一般に知られていたのです。

原因は染色体の変異

この疾患の原因となる遺伝子変異は X 染色体上にあります。ヒトにはX染色体とY染色体があり、その組み合わせで性別が決まります。

人にはX染色体とY染色体があり、その組み合わせがで性別が決まります。男性はXとYを1本ずつ、女性はXを2本持っています。この疾患が男性にしか現れない理由は、この疾患の原因となる遺伝子変異が X 染色体上にあるためです。

この遺伝子に“変異”があると、第8因子や第9因子はうまく作れません。

女性は2本のX染色体を持っているため、その上に位置する血液凝固因子遺伝子のコピーがいわば重複しているのです。一方のX染色体に「変異」があったとしても、もう片方の親から別のX染色体を受け継いでいるため、血液の凝固に影響がでないのです。

王室に生まれた保因者

このように、本人の血液凝固は正常であっても、片方のX染色体に”変異”を受け継いでる女性を「保因者 (キャリア)」といいます。男性の場合は、X染色体がひとつだけですから、その唯一の「X染色体」に血友病の変異がある場合、血液凝固に問題が出る可能性が高いのです。

保因者の子供は50%の確率で母親の突然変異を受け継ぐことになり、血友病を発症するか、または娘の場合「保因者」となります。女性が血友病に羅漢するのは、血友病の父親と「保因者」または血友病の母親の両方から変異したX染色体を受け継ぐまれな状況においてのみです。

ちなみにヴィクトリア女王の子孫に、このような二重相続の事例は知られておらず、いずれも「血友病」を発症したのは男児のみでありました。

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起源は女王の父母?

個人の血友病は通常、祖先に遡ることができますが、約30%の症例ではこの疾患の家族歴がなく、この疾患は自然な突然変異の結果であると推測されています。ヴィクトリア女王の場合は、自然発生的または遺伝子の突然変異であったようで、「両親」のいずれかから遺伝した可能性が最も高いといわれています。

ヴィクトリア女王の父であるケント公エドワード王子は血友病ではありませんでしたが、この突然変異は彼の体内で生殖細胞系の突然変異として発生した可能性があるとされています。自然突然変異率は父親の年齢と共に増加することが知られています。

遺伝子の行方

ヴィクトリア女王の誕生時、父親であるケント公は51歳でした。9世紀初頭の血友病患者の平均寿命が低いことを考えると、母親が血友病の恋人を持っていた可能性は極めて低く、ケント公の中での突然変異説が唱えられています。ヴィクトリア女王の母親のケント公爵夫人は「保因者」であった可能性はあるものの、この病気の家族歴があることは知られておらず、また彼女の子供の中でヴィクトリア女王だけが変異コピーを受け取った形でした。

女王の長女ビクトリア王女は血友病の遺伝子を逃れました。ビクトリアの第5子ヘレナ王女は保因者であった可能性はありますが、2人の健康な息子は成人まで生き延びています。他の2人の息子は乳児期に死亡していたますが、2人の娘にも問題はありませんでした。しかし、娘のアリスとベアトリスはこの遺伝子の保因者であることが確認されています。またヴィクトリアの息子レオポルドは血友病を患っていたため、娘のアリス王女 (アスローン伯爵夫人) も「保因者」となった形でした。

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まとめ

ヨーロッパの王室を中心に持ち込まれた血友病の遺伝子。そのはじまりは、ヴィクトリア女王の父であるケント公から受け継がれたのではないか、という説が濃厚です。

女性であるヴィクトリア女王には症状が現れませんでしたが、「保因者」となった彼女を通じて、”変異”した遺伝子は一部の息子、娘たちへと引き継がれ各国の王室へと受け継がれていきました。

一番ダメージを喰らったのは、断絶間近の王朝で世継ぎが血友病を患い、結果として怪僧の台頭を許し君主制の舵を失ったロマノフ王朝でしょう。ちなみに英国王室において血友病の遺伝子は途絶えており、エリザベス2世はじめチャールズ3世など現在の王室人にはその遺伝子は受け継がれていないのでした。

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管理人

歴史オタクの英日翻訳者。

スペインの児童書「ベラスケスと十字の謎 」に魅了され、世界史に夢中に。読み漁った文献は国内外あわせて100書以上。史実をもとに、絵画や芸術品の背景にある人間ドラマを炙り出します。

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