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ブロンズィーノが描く、憂いの欺瞞と愛欲【愛の寓意を解説】

2020/09/09
 
愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノをわかりやすく解説
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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

1545年頃、ブロンズィーノによって描かれた愛の寓意 (アレゴリー)。これは寓意画という、色々要素 (たとえ) をいれこむことにより、絵画に物語を吹き込むスタイルの作品です。真ん中でキスをするヴィーナスとキューピッドは愛欲の象徴今日はこの意味ありげで、複雑な作品をわくりやすく解説していきたいとおもいます。

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ブロンズィーノの愛のアレゴリーをやさしく解説

ブロンズィーノの愛の寓意を解説  (ブロンズィーノと思われる肖像画)

メディチ家の宮廷画家だったブロンズィーノ。『化した冷たい絵画表現』を好んで描いた画家、不自然に長く引きのばされた身に非現実的なポーズ感情を殺した仮面のような表情などが特徴です。

ブロンズィーノの愛の寓意を解説

有名な作品のなかには、本を持つ若者の肖像や、エレオノーラ・ディ・トレドなどがあり、ルネサンスの技術や画風をさらに突き詰め洗練させた画家でもありました。

 

寓話とはなにか

エデンの園と人間の堕落(ルーベンス、ヤン・ブリューゲル画) (エデンの園と人間の堕落 ルーベンス、ヤン・ブリューゲル画)

絵画にはしばしば寓意が詰め込まれています。寓意とは例え話、比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語。たとえば「禁断の果実」などですね。

愛のアレゴリー

このルーベンスの絵画にも見られるように『禁断の果実』などを書き込んで、『それが意味するなにか』をにおわせる正義や勤勉、怠慢など道徳的な要素をいれこむことで、人間に役立つ教訓をそっと教えてくれているといいます。寓意は動物や静物、自然現象など様々なものであらわされますが、擬人化されているのが特徴です。

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愛のアレゴリー

愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノ (ブロンズィーノの愛のアレゴリー)

画面の中にはせわしなく人や物やぎっしりと埋め尽くされており見た者は絵の艶かしさに畏怖を覚えるといいます。エレガントな色彩の美しさに、真ん中にうつる女性は陶器のようになめらかな肌。その輝かしい白さが、背景の妖しいブルーによく映える。クッションの赤や衣装の緑といった配色にも目を奪われ、どこを見ていいかわからない

生々しい貴婦人の女体と、絡みつく裸体の男の子』いやらしいですって?いやいや、この絵画に描かれたほとんどのものには意味があるのです。

 

絵画に描かれているものを、ひとつずつ解説

ブロンズィーノの愛の寓意を解説 (ブロンズィーノの愛のアレゴリー 中央部)

この絵画の主役は真ん中に描かれた、色気溢れる愛の女神 (ヴィーナス) です。左手には禁断な果実であるりんごを、右手にはキューピッドから奪ったとみえる矢を持っています。のヴィーナスにキスをしているのがまだ幼いキューピッド。

ブロンズィーノの愛の寓意を解説

そもそもキューピッド (エロス) はヴィーナス (愛の女神) の息子主役のこのふたり、どんな関係かと思いきやまさかの親子なのです。母子像なのに、なんとも不思議なこの構図。健全な親子の愛というよりは、何かもっと普通ではなにかを感じるこの絵画。この寓意画は「愛の中にある官能は、人間性を逸脱させることもあるということを示したいのかはたまた別の意図があるのか。ブロンズィーノはそもそもそれを肯定しているのか、否定しているのか。

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欺瞞をあらわす、緑の少女 (スフィンクス)

ブロンズィーノの愛の寓意を解説 (ブロンズィーノの愛のアレゴリー 左部分)

左側にうつるのはバラをもった少年その後ろに静かに佇む彼女は、愛くるしい少女かと思いきやなんとスフィンクス、表情もどこか恨みを残したような不思議な面持ち…「普通の人間の顔をしているのに、胴体は爬虫類で尾には毒針がついている」というのは、ダンテが『神曲』の時獄篇で示した、欺瞞界に住む怪物にまさにそっくり

ボッティチェッリの 地獄の図 1490年 (神曲をもとにボッティチェッリの描いた地獄の図  1490年)

欺瞞を表す仮面だけでなく、彼女がもつものにも意味がこめられています大前提として、右手には「理性、正義」といった善、左は「弱さ、不正」といった悪を象徴することが多いのですが、彼女は右手に「毒」をもち、左手に甘い蜜を持っています。善には毒が、悪には甘美が存在するという世界の本質を示しているのかもしれません。

 

すべてをつかさどる「時」の存在

愛のアレゴリーをわかりやすく解説

「時」は、この絵の一番上にいるように、あらゆるものに君臨する。右上にうつる時の翁が荒々しく容赦無く剥ぎ取ろうとしているカーテンは、ロマンティックな淡くも闇深いブルー夜の帳にかくれていた、愛という名のもとに蠢くさまざまなものが、一挙に白日のもとにさらされる場面を描いています。老人は白い翼と砂時計をたずさえ青いヴェールをはがそうとし、左側の女性がそれをおさえています。

 

それをおさえる「心理」の存在

ボッティチェッリの 地獄の図 1490年

「時の翁」の向かいにいる女性には、主に2つの説があります。

ひとつめは彼の娘「真理」であるという説彼女はカーテンをあける父翁の手助けをしており、口をあけたこの表情は悪徳の愛に対する「嫌悪感」だといいます。

ふたつめは女は時に抗う「夜、忘却」という説です。「時の翁」がカーテンをもぎとろうとするのに抵抗していることから、単純に青いカーテンは彼女の正体であり、暗闇の暗示であるという説ですね。

ボッティチェッリの 地獄の図 1490年

いずれにしても、この絵には愛に絡めて、さまざまな要素、悦び、苦しみ、偽り、光悦がからめて表現されているといるのでしょう。

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醜い老婆は、嫉妬の権化

【ブロンズィーノの愛の寓意】儚くエロティックな偽りの愛と快楽 (ロンドンナショナルギャラリー) (ブロンズィーノの愛のアレゴリー キューピッドの後ろにうつる女性と、左下にうつる頭をかきむしる老婆)

その下に描かれたのは、いちど見たら忘れられないような醜い老婆頭を掻きむしっている老婆は嫉妬の擬人像画面右上の老人は時の擬人像とされています。

 

すべてのものに、意味がこめられている

愛のアレゴリー (愛のアレゴリー ヴィーナスの足元におかれた仮面たち)

ヴィーナスとキューピッドはそもそも愛の擬人像、左下の足元にいる鳩は純愛・潔白の証。無邪気な少年が手にしているバラがあらわすのは「はかなさ」。一時の快楽をあらわし、キューピットが膝をたてているクッションは怠情や好色を示しています。

愛のアレゴリー (愛のアレゴリー キューピッドが膝をたてるクッション)

 

この絵が示すのは、「愛欲と欺瞞」

愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノ (愛のアレゴリー バラを手にする少年と、サソリを手にする少女 (スフィンクス) )

つまり総合するとこの絵は、『一時的な快楽』と『人をたぶらかす欺瞞の寓意像』ではないかといわれています。もうすこし簡単にいいますと、時間と真理によって、ヴィーナスとキューピッドの愛欲が暴かれているのです。バラがあらわす一時的なはかない感情、チラチラ見える純愛 (ハト)、すべてが偽りだという仮面、嫉妬に苦しむ老婆、右上に映る「真理と忘却」を示す女性。

愛のアレゴリー (ブロンズィーノの愛のアレゴリー 頭をかきむしる老婆)

宮廷人は神話や文学の寓意を読み解くのが大好きだったと言いますから、この難関な寓意画は教養高いブロンズィーノだから描けたもので、だからこそ宮廷人はこぞってこの絵を愛したのかもしれません。

 

教養高く、宮廷貴族の肖像画を多く描いたブランズィーノ

愛のアレゴリーと洗練者ヨハネ洗礼者聖ヨハネの聖家族(マドンナ・ストロガノフ)

ブロンズィーノは1503年フィレンツェに生まれました。マニエリスムの異才ポントルモに師事し、人体表現や繊細な色彩を学んだと言います。その後ペーザロの宮廷で活躍し、最終的にメディチ家の寵愛をうけ、『まるで鏡にうつっているかのような緻密な肖像画を』宮廷貴族のために描いたそうです。

寓話はいろんな絵画にこめられていますが解読専用の辞書があり、見見ただけだと「生々しい絵画」と思えるものにも教訓が色々とこめられているんですね。

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あとがきにかえて

Portrait of Laura Battiferri, 1555–60 (Portrait of Laura Battiferri, 1555–60 画:ブランズィーノ)

『遊びに飽きた人が、はじめたのが勉学である』と聞いたことがありますが、こういった寓話の読み解きというのは、教養が高かった貴族人ならではの高度な遊びだったのかもしれません。ロンドンナショナル・ギャラリー展にはこちらの絵画も来日するそうです。キャンパスの大きさほ1.5 x 1.2メートルととてつもなく大きく、その中にこめられた様々な寓話。ぜひ実物でこめられた意味を探してみてはいかがでしょうか。

ロンドン・ナショナルギャラリー展でみられる絵画

 

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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

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