EVER UPWARD. WE CAN DO IT.

【ブロンズィーノの愛の寓意を解説】儚くうつくしい偽りと愛欲

2020/02/16
 
愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノをわかりやすく解説
この記事を書いている人 - WRITER -
バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

 

1545年頃、ブロンズィーノによって描かれた愛の寓意 (アレゴリー)。寓意画という、色々要素 (たとえ) をいれこむことにより、絵画に物語を吹き込むスタイルの作品です。真ん中でキスをするヴィーナスとキューピッドは愛欲の象徴今日はこの意味ありげで、複雑な作品をひもといていきたいとおもいます。

スポンサーリンク

ブロンズィーノの愛のアレゴリーをやさしく解説

Bronzino (ブロンズィーノと思われる肖像画)

メディチ家の宮廷画家だったブロンズィーノ様式化した冷たい絵画表現を好んで描いた画家で、

  • 不自然に長く引きのばされた身に、非現実的なポーズ
  • 感情を殺した仮面のような表情などが特徴です

本を持つ若者の肖像画 (本を持つ若者の肖像 40代ごろの作品とおもわれる)

ルネサンスの技術や画風をさらに突き詰め洗練させた画家でもありました。有名な作品のなかには、本を持つ若者の肖像 (1530-40頃)や、エレオノーラ・ディ・トレドなどがあります。

Bronzino (エレオノーラ・ディ・トレド)

 

寓話とは、そもそもなにか

エデンの園と人間の堕落(ルーベンス、ヤン・ブリューゲル画) (エデンの園と人間の堕落(ルーベンス、ヤン・ブリューゲル画))

絵画にはしばしば寓意が詰め込まれています寓意とは例え話、比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語。 たとえば「禁断の果実」などですね。

愛のアレゴリー

このルーベンスの絵画にも見られるように「禁断の果実」などを書き込んで、「それが意味するなにか」をにおわせることで、正義や勤勉、怠慢など道徳的な要素をいれこむのです。名指しされることのない登場者は、動物、静物、自然現象など様々だが、必ず擬人化されているのが特徴で、人間に役立つ教訓をそっと伝えてくれているのです。

スポンサーリンク

絵画に描かれているものを、ひとつずつ解説

愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノ (ブロンズィーノの愛のアレゴリー)

生々しい貴婦人の女体と、絡みつく裸体の男の子。いやらしい?やいや、この絵画に描かれたほとんどのものには意味があるのです。この絵画の主役は真ん中に描かれた、色気溢れるヴィーナスです。左手には禁断な果実であるりんごを、右手にはキューピッドから奪ったと言われる矢がみえます。向かって左側、そのヴィーナスにキスをしているのがまだ幼いキューピッド

愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノ

左側にうつるのはバラをもった少年。その後ろに静かに佇む少女はなんとスフィンクス、 左手にミツバチの巣、右手にはなんとサソリをもっています。表情もどこか恨みを残したような不思議な面持ち…

愛のアレゴリー (ブロンズィーノの愛のアレゴリーキューッピッドの後ろにうつる少女と老人)

そして右上にいる老人は白い翼と砂時計をたずさえ青いヴェールをはがそうとし、左側の女性がそれをおさえています。その下に描かれたのは、いちど見たら忘れられないような醜い老婆

【ブロンズィーノの愛の寓意】儚くエロティックな偽りの愛と快楽 (ロンドンナショナルギャラリー) (ブロンズィーノの愛のアレゴリー キューピッドの後ろにうつる女性と、左下にうつる頭をかきむしる老婆)

次のパラグラフではそれぞれが意味するものを、解説していきたいとおもいます。

 

愛の寓話 (アレゴリー) が意味するものとは

愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノ (ブロンズィーノの愛のアレゴリー 愛欲の象徴であり、禁断の愛) 

一見バラバラにみえる要素ですが、もちろんそれぞれに意味が意味があります。主人公の貴婦人にとっては、まだ若すぎるキューピッド。お仕えの子でしょうか、貴婦人が手にしている禁断の果実から、これは「禁断の恋」であることがわかります。画面右下に描かれた仮面はカーニバルに使われることから、愛欲のシンボルとされ、またいつわりを隠すといった意味もあります。

愛のアレゴリー (愛のアレゴリー ヴィーナスの足元におかれた仮面たち)

ヴィーナスとキューピッドはそもそも愛の擬人像、左下の足元にいる鳩は純愛・潔白の証。無邪気な少年が手にしているバラがあらわすのは「はかなさ」。一時の快楽をあらわし、キューピットが膝をたてているクッションは怠情や好色を示しています

愛のアレゴリー (愛のアレゴリー キューピッドが膝をたてるクッション)

そしてキューピッドの背後で頭を掻きむしっている老婆は嫉妬の擬人像画面右上の老人は時の擬人像とされています。この時の翁の視線の先にいる横顔の女性は、真実もしくは忘却の擬人像とされています。

愛のアレゴリー (愛のアレゴリー 右上にうつる女性)

ミツバチやサソリをもつ少女は、欺瞞の擬人像ですね。

 

この絵が示すのは、「愛欲と欺瞞」

愛のアレゴリー (愛の寓話) ブロンズィーノ (愛のアレゴリー バラを手にする少年と、サソリを手にする少女 (スフィンクス) )

つまり総合するとこの絵は、「一時的な快楽人をたぶらかす欺瞞の寓意像」ではないかといわれています。もうすこし簡単にいいますと、時間と真理によって、ヴィーナスとキューピッドの愛欲が暴かれているのです。バラがあらわす一時的なはかない感情、チラチラ見える純愛 (ハト)、すべてが偽りだという仮面、嫉妬に苦しむ老婆、右上に映る「真理と忘却」を示す女性。

愛のアレゴリー (ブロンズィーノの愛のアレゴリー 頭をかきむしる老婆)

宮廷人は神話や文学の寓意を読み解くのが大好きだったと言いますから、この難関な寓意画は教養高いブロンズィーノだから描けたもので、だからこそ宮廷人はこぞってこの絵を愛したのかもしれません。

スポンサーリンク

教養高く、宮廷貴族の肖像画を多く描いたブランズィーノ

愛のアレゴリーと洗練者ヨハネ洗礼者聖ヨハネの聖家族(マドンナ・ストロガノフ)

ブロンズィーノは1503年フィレンツェに生まれ、マニエリスムの異才ポントルモに師事し、人体表現や繊細な色彩を学んだと言います。その後ペーザロの宮廷で活躍し、最終的にメディチ家の寵愛をうけ、まるで鏡にうつっているかのような緻密な肖像画を宮廷貴族のために描いたそうです。

寓話はいろんな絵画にこめられていますが解読専用の辞書があり、一見見ただけだと「生々しい絵画」と思えるものにも教訓が色々とこめられているんですね。

スポンサーリンク

あとがきにかえて

Portrait of Laura Battiferri, 1555–60 (Portrait of Laura Battiferri, 1555–60 画:ブランズィーノ)

「遊びに飽きた人が、はじめたのが勉学だ」と聞いたことがありますが、こういった寓話の読み解きというのは、教養が高かった貴族人ならではの高度な遊びだったのかもしれません。ロンドンナショナル・ギャラリー展にはこちらの絵画も来日するそうです。色々とこめられた意味を探してみてはいかがでしょうか。

ロンドン・ナショナルギャラリー展でみられる絵画

 

スポンサーリンク

 

この記事を書いている人 - WRITER -
バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です