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読めば中世の宮廷へ迷いこむ【ベラスケスの十字の謎】

2019/10/02
 
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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

 

プラド美術館に所蔵されているベラスケスの名画、ラス・メニーナス真ん中に立つ王女マルガリータと、お世話をする二人の侍女大きなキャンバスを前に堂々と立つ画家自身と、真ん中の鏡にぼんやりと映り込む王と王妃。そう、この絵は、まさに「王」の視線が捉えた瞬間この記事では、『ラス・メニーナス』に秘められた謎と、中世スペイン宮廷の世界へ迷い込める不思議な本をご紹介します。

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ラス・メニーナスに残された2つの謎

(ラス・メニーナス ベラスケス 1656年 プラド美術館)

画家のアントニオ・アシスクロ・パロミーノは、1724年『侍女たち(ラス・メニーナス)』に描かれた全ての人物の身元を調べて発表しました。しかしながら、絵にはふたつの謎が残されたのです。

ただ右奥に喪服をきて佇む男性は誰なのか、ベラスケスの胸にある(サンティエゴ騎士団の)赤い十字の紋章はだれが書き入れたのかこの2つのこたえは、時のベールに閉ざされ、今なお明かされていません。

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スペイン宮廷の世界に入り込める、不思議な児童書

(ベラスケスの十字の謎 2006/5/1 エリアセル カンシーノ (著), Eliacer Cansino (原著), 宇野 和美 (翻訳))

スペインで指折りの児童書『ベラスケスの十字の謎』は、右端に描かれている少年(犬に足を乗せている小人)ニコラスの成長を、実在の名画『ラス・メニーナス侍女たち』に秘められた謎にからめて描、スペインのミステリーファンタジーそこにはラス・メニーナスを描くために、スランプと奮闘するベラスケス、フェリペ4世と廷臣、当時宮廷に訪れる人々の様子が事細かに書かれており読んだ者はまるで自分が宮廷の中に入ったような、不思議な感覚に陥ります。

 

『ベラスケスと十字の謎』あらすじ

17世紀イタリアからスペインの宮廷に連れてこられたニコラスは、小人であるために親に捨てられた男の子スペインに向かう船上で、「これからは宮廷や貴族の元で道化を演じ、なぐさみものにされる」と脅かされつつも、知恵を蓄え、”他の者には見えないものを見、聞こえないものを聞き”、自分自身を信じれば道が開ける、と教わります。

その言葉を胸に、王家に仕えるものとしてふさわしい礼儀や知識を身につけ、宮廷での立ち回りを覚えたニコラスは「利発な子」だと評判になり、ひょんなことから、宮廷画家ベラスケスの絵『宮廷の侍女たち』に描き入れられることになるのです。

絵の完成までベラスケスの館で暮らすようになったニコラスは、画家がネルバルと名乗る謎の男と、この絵をめぐって、ある取引きをしようとしていることを知ります。ベラスケスはこの男から何を得、かわりに何を差し出そうとしているのか。そしてある日、ネルバルの家に使いにいったニコラスは、ありえないものを目にすることになるのです…

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スペイン宮廷が抱えた、慰み者

 

(『セバスチャン・デ・モーラ』 1645年頃 ベラスケス』)

フェリペ4世が戴冠したころ、宮廷には数百をこえる奴隷がいました。重労働をおこなう奴隷のほかに、スペイン宮廷が抱えていたのが「慰み者」と呼ばれる、超肥満体、巨人、阿呆、異形のものなど、一風変わった人たちで、その数はベラスケスが宮廷にいた40年間で50人を超えたといいます。本の主人公ニコラスも、そのまた1人でした。

 

本書の見どころ

”当時のヒエラルキー、宮廷に生きた人々の姿を少年の目を通して覗き見れる”のが、この本の面白さです。少年か訪ねてくるとベラスケスは偏見なく彼を迎え入れます。とうの昔に亡くなったはずのベラスケスが工房で「国王陛下と王妃をどこに書き入れようか」、「こんなことは一生この絵は仕上がらんだろう」悩む姿は生々しく少年の目を通をして自分がベラスケスと会話しているような錯覚陥ります。

この本の中ではフェリペ4世も生きていて、謁見する場面は圧巻です。ダンテの『新曲』を暗唱する場面もあり、フィクションながら中世のヨーロッパを体験できる、最高の児童書といえるでしょう。

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あとがきにかえて

チャンスはいつ、どこからやってくるかわからない。というのも、運命というのはとても気まぐれなもので、善人悪人かまわず、でたらめに幸運を振りまくのである。かくしてチャンスの女神には前髪しかなく、後ろはつるっ禿げであるという。目の前にやってきた前髪を掴まず、考えればあっという間に「好機」は過ぎ去る

(運命を擬人化した画 『ネメシス』アルブレヒト・デューラー 1502年頃 カールスルーエ州立美術館所蔵)

「好機」はしばしばネメシス (復習の女神) とも混同される。ネメシスはギリシャ神話に出てくる復習の女神であり、不正を糾弾したり、過分な幸運に預かったものに再び身の程を知らせる役割を担うからだ。ニコラスは見えない物を見、聞き、着実に「好機」を掴んでいる。生きる上で大切なことを、歴史と絡めて教えてくれる本書はやはり最高の児童書だと思う

ハプスブルク家シリーズの続編はこちら

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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

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