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読めば中世の宮廷へ【ラス・メニーナス ベラスケスの十字の謎】

2020/04/10
 
ベラスケスと十字の謎
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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

プラド美術館に所蔵されているベラスケスの名画、ラス・メニーナス真ん中に立つマルガリータ王女と、お世話をする2人の侍女。大きなキャンバスを前に堂々と立つのは画家自身、真ん中の鏡にぼんやりと映り込むのは王と王妃

(ラス・メニーナス ベラスケス 1656年 プラド美術館)

そう、この絵は、まさに「王」の視線が捉えた像を切り取ったもの。この記事では、『ラス・メニーナス』に秘められた謎と、中世スペイン宮廷の世界へ迷い込める不思議な本をご紹介します。

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スペイン宮廷の世界に入り込める、不思議な児童書

(ベラスケスの十字の謎 エリアセル カンシーノ (著) )

『ベラスケスの十字の謎』は、スペインで指折りの児童書右端に描かれている少年(犬に足を乗せている小人)ニコラスの成長を、実在の名画に秘められた謎にからめて描くミステリーファンタジー

出てくるのは『ラス・メニーナス』を描くために頭を抱えて奮闘するベラスケスフェリペ4世と廷臣たち。当時宮廷に訪れる人々の様子が事細かに書かれており、まるで自分が宮廷の中に入ったような感覚におちいる不思議な本です。

 

『ベラスケスと十字の謎』あらすじ

ときは17世紀、主人公はイタリアからスペインの宮廷に連れてこられたニコラス彼は小人であるために親に捨てられた男の子でした。スペインに向かう船上で「これからは宮廷や貴族の元で道化を演じ、なぐさみものにされるだろう」と脅かされつつも、同じ小人症の男性に知恵をたくわえ、他の者には見えないものを見、聞こえないものを聞き、自分自身を信じれば道がひらけると教わります

その言葉を胸に、王家に仕えるものとしてふさわしい礼儀や知識を身につけ、宮廷での立ち回りを覚えたニコラスは「利発な子」だと評判を得るまでに成長。そしてひょんなことから、宮廷画家ベラスケスの絵『宮廷の侍女たち』に描き入れられることになるのです。

絵の完成までベラスケスの館で暮らすようになったニコラスは、画家がネルバルと名乗る謎の男と、この絵をめぐって、ある取引きをしようとしていることを知ります。ベラスケスはこの男から何を得、かわりに何を差し出そうとしているのか。そしてある日、ネルバルの家に使いにいったニコラスは、ありえないものを目にすることになるのです…

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本書の魅力

スペイン宮廷のリアルを明るみに

(セバスチャン・デ・モーラ 1645年頃 ベラスケス画)

フェリペ4世が戴冠したころ、スペイン宮廷には数百をこえる奴隷がいました。重労働をおこなう奴隷のほかに、スペイン宮廷が抱えていたのが慰み者と呼ばれる、超肥満体、巨人、阿呆、異形のものなど、一風変わった人たちで、その数はベラスケスが宮廷にいた40年間で50人を超えたといいます。本の主人公ニコラスも、慰み者と呼ばれたひとりでした。

 

当時のヒエラルキーを、少年の目を通して

『当時のヒエラルキー、宮廷に生きた人々の姿を少年の目を通して覗き見ることができる』のが、この本の面白さです。少年か訪ねてくるとベラスケスは偏見なく彼を迎え入れます。とうの昔に亡くなったはずのベラスケスが工房で国王陛下と王妃をどこに書き入れようか」「こんなことは一生この絵は仕上がらんだろう」悩む姿は生々しく少年の目を通をして自分がベラスケスと会話しているような錯覚陥ります。

この本の中ではフェリペ4世も生きていて、謁見する場面は圧巻です。ダンテの『新曲』を暗唱する場面もあり、フィクションながら中世のヨーロッパを体験できる『最高の児童書』といえるでしょう。

 

ラス・メニーナスに残された2つの謎

(ラス・メニーナス中央部)

画家のアントニオ・アシスクロ・パロミーノは、1724年『侍女たち(ラス・メニーナス)』に描かれた全ての人物の身元を調べて発表しましたしかしながら、絵にはふたつの謎が残されたのです。

  • 右奥に喪服をきて佇む男性は誰か
  • ベラスケスの胸にある赤い十字はだれが書き入れたのか (サンティエゴ騎士団の紋章)

この2つのこたえは時のベールに閉ざされ、今なお明かされていません。こちらの謎については記事 (【ラス・メニーナス】ベラスケスの胸に描かれた赤い十字の謎)でより深く追求しています。

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らくがき

チャンスはいつ、どこからやってくるかわからない。というのも、運命というのはとても気まぐれなもので、善人悪人かまわず、でたらめに幸運を振りまくのである。かくしてチャンスの女神には前髪しかなく、後ろはつるっ禿げであるという。目の前にやってきた前髪を掴まず、考えればあっという間に「好機」は過ぎ去る

(運命を擬人化した画 『ネメシス』アルブレヒト・デューラー)

「好機」はしばしばネメシス (復習の女神) とも混同される。ネメシスはギリシャ神話に出てくる復習の女神であり、不正を糾弾したり、過分な幸運に預かったものに再び身の程を知らせる役割を担うからだ。ニコラスは見えない物を見、聞き、着実に「好機」を掴んでいる。生きる上で大切なことを、歴史と絡めて教えてくれる本書は、やはり最高の児童書といえるであろう。

ハプスブルク家シリーズの続編はこちら

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バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて通訳、翻訳に従事。フリーの翻訳やイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。ダーリンはアメリカ人、ゆるゆる仲良くやっています。

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